東京大学 古関・大西研究室

研究紹介

ポスター

非接触給電

非接触給電システムにおける実用的な制約を考慮した補償回路の統一的かつ系統的な設計

武田 広大

本研究では非接触給電技術(WPT)の電力伝送特性は用いられる補償回路によって大きく変化・調整できる点に注目し, 電気自動車向けの互換性を担保したシステム設計を例として統一的な補償回路設計論を構築を目指す。

近年,電気自動車(EV)の航続距離延長や利便性の向上のためWPTシステムを用いてEVに給電を行う研究が世界でなされている。 従来研究ではWPTの送電側と受電側のシステムは決まった組合せとして,電気の送受に用いられるコイルと電源周波数で共振するように選ばれ,回路構成もそれぞれ異なるものが使われてきた。 このような設計は正規の組み合わせにおいて良い電力伝送特性を実現できる。 しかし,実用的には必ずしも設計通りの条件で利用されるとは限らない。 たとえば,送受電回路の組合せが設計段階で想定されていたもの一致しなかったり,共振を利用した補償回路の素子の値がばらつくことにより共振状態の維持が難しいことなどがある。 このため,実用的な補償回路では共振条件が満たされていないことがある。 このような,共振条件の満たされない補償回路は解析が複雑なため,これまで電力伝送特性は十分に研究されておらず,結果として非常に見通しの悪い補償回路の設計を余儀なくされている。

そこで,本研究では送電側と受電側に回路を分けて電力伝送特性の可視化を行うことで, 電力伝送特性の把握及び評価を様々な組み合わせの補償回路に対して直感的に行える方法を提案し, 非接触給電システムの系統的な設計方法を開発する。 さらに,本手法に非接触給電システムの過渡現象の影響を加味し電気自動車の走行中非接触給電の補償回路設計へ応用可能とすることでより一般的な補償回路の設計論とすることを目指す。

磁界共振形非接触給電におけるサーチコイルを用いた検出不可能領域の無い金属性異物検知法

韓 旭

The wireless power transfer system for electrical vehicle can build a strong magnetic field in medium distance space. This AC magnetic field will heat any metal dropped into this area which is a safety problem in using WPT system. The traditional methods can just detect some big metal and can be affected by the receiving coil misalignment and sometimes have dead zone which limits their application.

To solve these problems, I am trying to use new methods to design the search coil and improve the detection method to find the metal. Now I have succeeded in distinguishing the metal object and receiving coil misalignment. Besides, I am also working to improve the robustness of the detecting system In order to promote the practical use of this technology.

永久磁石形同期機・リニアドライブ

搬送用磁気浮上型永久磁石リニア同期モータの質量・重心推定と非干渉制御

溝口 智也

磁気浮上は, 磁気力によって非接触で物体の支持を可能とする技術で, 摩擦や磨耗がないために高速度移動の実現やメンテナンスフリーなシステムの確立において有用である. 我々の研究グループでは, 横磁束型永久磁石リニア同期モータと吸引型常伝導磁気浮上を組み合わせた新しい構成を提案した. この構成は推力密度と負荷容量が他の構成と比較して優れており, 工場における搬送装置などへの応用が期待できる.

この装置で実際に搬送する環境を想定したとき, 物体把持による質量・重心の変動が生じ, これが制御性能の悪化および軸間干渉の原因となる. 本研究では, これを改善するために, リニアモータ用永久磁石による浮上方向への外乱のモデル化誤差や個体差の影響を受けずに, 磁気浮上における磁気力から浮上体の質量・重心のxy座標を推定する手法を提案し, シミュレータと実機を用いてその性能を評価した.

リニアモータによる高加速度運動を実現するためには重心のz座標の情報を用いた磁気浮上系との非干渉制御も重要である. 本研究では, 浮上系の磁気力とリニアモータによる推力を考慮した重心のz座標の推定と非干渉制御について研究を進めている.

リニア同期発電機を用いた波力発電システムの設計とその制御

光井 祐人

本研究では、リニア同期発電機の可動部に浮体を取り付けたような構造を持つポイントアブソーバ式と呼ばれる波力発電を取り扱う。 これを海上に設置することで、波の上下運動が浮体と連動することにより発電を行う。 波力発電は、現在までに様々な研究や実証実験が行われてきたが、発電コスト(円/kWh)が大きいため普及には至ってない。 本研究では、リニア同期発電機の設計とその制御を検討することで、発電効率の向上と発電機の長寿命化を達成し、発電コストの低減を目指す。

リニア同期発電機に求められていることは、ディテント力と呼ばれる力を低減し、 発電機制御を容易にすること、単位体積当たりの出力密度を大きくすることである。 本研究では、可動子磁石板を2つ持つ二段の縦横磁束型リニア同期発電機に着目している。 2つの可動子磁石板の電気的な位相をずらすことにより、ディテント力を83%低減することに成功した。 また、電機子巻線の相配置を変更することにより、出力の低下も防いだ。 以上から、出力密度を下げることなくディテント力を効果的に低減する手法が確立でき、試作機の測定により提案法の有用性を示した。

発電システムの制御に求められていることは、高効率な電力変換が行えること、発電機ストロークなどの物理的制約を満足させながら稼動させることである。 そこで、古くから研究させてきたインピーダンス制御と、近年盛んに研究されているモデル予測制御に着目し、数値計算による検討を行った。 結果、発電機の性能を超える波が印加されたときに性能が著しく低下することが判明した。 今後は、発電機の物理的制約を常に満足させるような制御アルゴリズムの構築、機械的な発電機保護装置の設置などの検討を行い、 試作機を用いた机上実験および水槽実験を行う予定である。

Design and Control of Magnetically Levitated Permanent Magnetic Linear Motor as A Conveyor System

Salman Ahmed

将来,磁気浮上式輸送キャリアは様々な業界に使われる可能性がある. 例えば,精密機器や半導体製造装置,工場の搬送装置などである. これらに応用するためには高い精度が必要である. 磁気浮上はリニアベアリングによって,非接触で摩擦なくモーション(移動)を提供することができるため,高精度な運転が可能である. しかし,磁気浮上を用いた輸送は制御が難しく,高価なハードウェアが必要である.たとえば,エアギャップセンサーである. 商業化のためには価格を下げることが不可欠であるため,ギャップセンサーを用いずに浮上している可動部の制御を安定化する方法について研究をしている. また,磁気浮上は一般に,分厚いフレームや非磁性体が追加で必要となるため,キャリアの重さが増え,運ぶことの出来る重量が減ってしまう. そこで,大きな推力を発生させるモータが必要である. 本研究室では,コンパクトな6自由度の横磁束形永久磁石リニア同期モータの開発と磁気浮上の導入について研究を行っている.

鉄道

Study of Unbalance at Point of Common Coupling in 25kV AC Traction System with Different Operational Scenarios

Varsha Singh

In most of the railways across the world, single phase 25kV traction power supply is obtained by connecting the single-phase traction transformer at substation across the two phases of the utility grid in a cyclic manner. The asymmetric loading of this single-phase load in different sections of traction distribution network causes voltage unbalance at the point of common coupling (PCC) with the three-phase grid system. This adversely affects other consumers of the connected network. With the ever-increasing traction load and introduction of high-speed railways in different countries this power quality problem is attaining newer dimensions.

In this research, we propose to model the moving trains along with the power supply system to study the extent of unbalance in the grid due to each influencing factor: traction transformer configurations like single phase, Scott etc., headway, speed and total weight of the train. Further it is proposed to integrate optimum scheduling of the traction load for restricting the unbalance within the IEEE limits in an already established system where it is economically not feasible to entirely change the infrastructure like transformer.

Disturbance Observer Based Anti-Slip Re-Adhesion Control for Electric Train

Shikha Saini

In this study, three phase induction motor torque control using a disturbance observer and PID controller is proposed for wheel slip control and re-adhesion as delay in wheel slip control by conventional methods not only causes rail and wheel burns and increased maintenance but also sometimes results in stalling of trains and poor riding index. Force of adhesion existing between rail and wheel is responsible for transferring the angular tractive force acting on wheel to a longitudinal force which is required to pull the train and is also responsible for slip velocity. Based on typical characteristic of adhesion coefficient and slip velocity, a two mass rail and wheel load model driven by DC motor controlled by proposed method is analyzed using Simulink for better appreciation and to extend the understanding further for analyses of real train model. In proposed control method change in rail and wheel adhesion is observed as change in load torque by disturbance observer to adjust input torque obtained by motor accordingly. Also literature review is done for the re-adhesion methodologies governed by the concept of rate of change in slip velocity and conservation of angular momentum. Future work is envisaged to do Simulink based performance analyses of proposed control and re-adhesion method for real train model.

高頻度運転時の遅延伝搬を抑制する無線列車制御

坂井 桂祐

高頻度運転が行われる都市鉄道では駅停車時間の超過による遅延伝搬の抑制が重要である。 本研究では先行列車の発車時刻が未確定の状況下で、駅発着時隔を最小化する速度制御法を提案し、ケーススタディーでその性能を評価する。

省エネルギー運転・運行計画の工夫・エネルギー蓄積装置積極活用を統合した鉄道電力制御

カムピーラーワット ワラーユット

本研究では,都市鉄道システム(DC鉄道システム)における電力管理手法を提案する. 提案手法は,運転戦略の設計,列車のスケジューリング,エネルギー貯蔵システムの利用を組み合わせて,省エネ運転の改善を図ることを目的としている. 基本的に,運転戦略の設計は,各列車の効率的な省エネルギー運転を提供し,列車計画の設計は列車間の有効な回生電力使用を提供する. しかし,回生電力は列車間で交換することによって利用することができる. 余剰回生電力が相当量存在する. 余剰回生電力を管理するために,エネルギー貯蔵システムは,最適な容量で適切な場所に設置されます. ソフトウェアとハードウェアの統合された設計により,電力管理はより柔軟で効果的になり,有効な回生電力を増やすことができます. バンコク高速輸送システムの数値的ケーススタディを実施し,提案された方法を開発するための予備的プロセスとして評価した. 数値的結果から,省エネルギー運転の改善が達成できることが示された.

電気鉄道の加速度向上による省エネルギー自動運転の設計と効果の実験的検証

三好 正太

電気鉄道における省エネルギー運転は,車両の最大加速度で加速,その後惰行,最大の減速度で停車する運転であるとされてきた。 本研究ではこの走行法に基づき,加えて車両の最大加速度を増し,エネルギーを消費しない走行状態である惰行の時間を更に延ばすことで, 走行の消費エネルギーを削減することを目的とする。 車両の最大加速度を向上することで加速時間を短縮でき,その分惰行時間を増加できる。 加えて,高速度で走行する時間が増加するため,走行時分を一定に保つ場合には加速度向上により最高速度を下げることができる。 加速度向上により,惰行時間の増加と,最高速度低下による入力エネルギーの削減により,省エネルギー効果を得られる。 本研究は設計した運転パターンの実現性,再現性が手動運転よりも高い利点を有する自動列車運転装置(ATO)を使用した。 加速度向上による省エネルギー運転パターンの提案と効果の評価は,数値計算による省エネルギー効果試算を行うために車両の駆動効率の測定, 省エネルギー運転パターンの走行シミュレーションによる設計と省エネルギー効果の数値計算,省エネルギー走行パターンをATOに実装, 走行試験による省エネルギー効果の検証の手順により行った。リニアメトロを対象に提案法を実装し実車実験を行い,提案法の有効性を示した。

経済的設備増強で優等列車の効果的導入を図る利便性の高い都市鉄道設計法

粟木 一輝

都市鉄道において通勤時間帯の混雑や列車の低速化は大きな課題となっている, 本研究では,この課題を抜本的に解決する方法として,区間的に線路を増やし,急行列車の導入及び列車の高頻度化を図る方法を提案する. 本論文では,列車計画の評価法として旅客の移動時間や乗換・混雑による不効用の和,設備計画の評価法として追加する設備の費用を考慮し, これらを二軸的に評価することによってよりよい評価の選定を行う. これらの計画の選定に向け,先行研究の損失時間ダイヤを用い,これを拡張して線路の増設が必要な最小限の区間を求める方法を示す. 全体の列車計画においては,急行の停車駅の問題と緩行の待避の問題の2つに課題を分割した上で, 前者を全探索によって,後者を最小費用流問題の拡張によって計算する. ケーススタディを通じて本手法で作成された計画の比較を行い,設備計画として考慮する年数が長くなるにつれて区間的線路増備の効果が大きくなること, および先行研究に挙げられる3線による運行計画および待避設備を用いない緩行のみの列車計画と比較して, 旅客の不効用および設備費用が中間となるような鉄道計画が可能であることを示した.

制御システム

Data-driven disturbance rejection system design for high-precision positioning system

Xiaoke Wang

This research is about high precision positioning system’s disturbance rejection. High-precision positioning system contains two parts, the actuator side and table side, which are connected by high rigid components, such as high rigidity leaf spring. The table side which is the non-collocated side has also been mounted with an encoder to guarantee the precision position of itself.

By feedbacking the table side encoder information into the actuator side to design the controller which not only guarantees the stability but also disturbance rejection performance of the whole system is conducted in this research. What’s more, the frequency response data only is used for designing controller which can eliminate the influence of model uncertainty and increase the feedback bandwidth.

昇圧型DC-DCコンバータのPreactuationによる出力電圧過渡応答の精密制御法

三好 正太

昇圧型DC-DCコンバータはスイッチング素子を用いて電流を断続することにより,直流電圧をより高い直流電圧に変換するパワーエレクトロニクス回路である。 電気自動車のような蓄電池を電源とし,かつ電池よりも高電圧の負荷を要する機器,太陽電池の系統連系のような出力に高電圧を要する機器の電圧管理,交流電源による電気駆動における力率補償回路(PFC)などに用いられる,パワーエレクトロニクスを構成する重要な回路である。 昇圧型DC-DCコンバータは,デューディ比を制御入力として扱う時に非線形な特性を示す制御対象であるが,その小信号伝達関数には不安定零点が存在する。 理想的なFF制御器はプラントの逆系であるが,不安定零点の逆系は不安定極となるため,単純に逆プラントを用いたFF制御ができない。 このため,制御による昇圧コンバータの応答速度の高速化,高精度化は重要な課題である。 また,特に大容量サーボ駆動については,回路素子の小型化が大きな課題となる。 この問題を解決する方法として,非最小位相系に対し完全追従を実現する制御手法であるPreactuation Perfect Tracking Control (PPTC)が有効であると考えられる。 昇圧型DC-DCコンバータへの応用を考えることによりPPTCの適用対象の拡張を試みる。 提案手法により,ステップ応答に対し71%の追従誤差の低減,33%の整定時間の削減が見られた。

空気圧アクチュエータ駆動の高帯域化のための適応同定に基づく流量2自由度制御法

白戸 柚衣

本研究は,液晶製造装置のような大型の位置決めステージの粗動部に空圧シリンダを適用することを目標とした研究である。 液晶製造装置は液晶ディスプレイを製造するためにガラスプレートに回路パターンを投影する装置である。 近年ではガラスプレートの大型化,高精細化の要求や,コストダウンの要求もある。 そのため,液晶製造装置の粗動ステージには,長ストローク,μメートル程度の精度,高速性が必要である。 従来装置の粗動ステージに用いられてきたリニアモータでは,熱や質量の増大が性能を抑制している。 この問題があるため,ステージに空圧シリンダを用いることが提案されている。 しかし,空圧駆動系の制御には電磁弁,チャンバ,ステージの各要素において非線形性や時間遅れ,共振といった課題がある。 本研究では駆動系で最もベースとなる電磁弁に焦点を合わせ,その非線形性補償を行った。

提案法は3つの段階に分けられる。1つめに適応同定に基づいて電磁弁の逆モデルをチューニングし, 2つめに時定数の小さい流量計を用いたフィードバック制御,3つめにフィードフォワード制御を導入した。 電磁弁の非線形性は測定回ごとに入出力特性がばらつくことが補償を困難にしていたが, 適応同定により逆モデルがより正確になり,2自由度制御の有効性が期待できるようになった。 実験結果から,係数を固定とした逆モデルのみの場合よりも,50ms以内に10分の1の誤差となることが示された。

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